鹿児島県の”薩摩焼”について|美しき煎茶道具をもとめて

こんにちは。

焼き物・陶磁器好きの翼仙(よくせん)です。

今回は鹿児島県の工芸品である「薩摩焼(さつまやき)」についての記事です。

地方文化を盛り上げたい。

私ごとですが、地方文化や伝統工芸をもっと盛り上げたいと思っています。

いま日本の社会問題としてあげられる伝統産業の担い手不足や、地方からの若者流出、人口減少、限界集落問題などがあります。

たくさんの要素がかさなって、こういった社会問題が発生していますが、わたしは地方文化や伝統産業の魅力をもっと広報PRすることで、サポートしていきたいと考えています。

地域の人がみんなで守ってきた文化や風習、慣習。そこには優しい魅力があり、その魅力を発信して理解してもらうことが地域への愛着につながり、問題解決の小さな糸口になると考えおります。

みんな地方文化を盛り上げましょう!

”美しい煎茶道具を求めて”とは

日本茶の趣味として、煎茶道という伝統芸道があります。抹茶の茶道は有名ですが、煎茶道とは急須からお茶をいれる茶道の流派です。茶道と同じようにたくさんの煎茶道具をもちいて、お客様に美味しいお茶をいれるため、”見て”楽しんでいただくためにも道具の美しさは重要です。

このシリーズでは、お客様にお茶をより美味しく、より楽しく飲んでいただくために、各地の伝統工芸の産地に勉強に行ったこともふくめて、まとめた記事です。

日本全国には沢山の焼き物の窯元がありますが、薩摩焼は特別です。その美しい白い器の表面に繊細な絵柄を描いたり、反対に真っ黒い器もあったり、はたまた皇室に献上されていたりと、資料を読んでいるだけで面白い陶磁器です。

実際に鹿児島県の薩摩焼の聖地にいってきましたので、その時の様子や、おすすめの薩摩焼ビュースポットも合わせてご紹介できればと思います。

薩摩焼(さつまやき)とは

薩摩焼(さつまやき)は、文禄・慶長の役の頃、当時の薩摩藩主である島津(しまづ)氏が朝鮮から連れ帰った李朝(りちょう:1392年から1897年に朝鮮半島に存在した王朝のこと)の陶工たちによってはじめられました。

以来400年以上に及ぶ長い歴史の中で、薩摩焼は鹿児島の豊かな風土に育まれるとともに、陶工たちの弛まぬ努力によって美しさに磨きかかり、日本を代表する焼き物となりました。

薩摩焼の特徴とは

鹿児島の伝統工芸品である薩摩焼は、他の地域にはない特徴や由来を持つ一風変わった焼き物です。

薩摩焼には白薩摩(しろさつま)と黒薩摩(くろさつま)があります。文字通り見た目の色でわかれます。薩摩焼の特徴は種類が多く、竪野系、龍門司(りゅうもんじ)系、苗代川(なえしろがわ)系、西餅田(にしもちだ)系、平佐(ひさら)系、種子島系と呼ばれ、地名によって6種類ものカテゴリーに分けられます。

白薩摩は、表面に貫入(かんにゅう)というきめ細かいヒビの入った白肌に、絵付けや透かし彫りが施された絢爛豪華な焼物で、かつては島津家御用の品として作られていました。もとは何色かの色が浮いている土や陶石を、極限まで白色に近づけ絵付けをする、とてつもない労力がいる、芸術品とまで言えるのが”白薩摩”です。

鹿児島県の陶磁器である薩摩焼の1つ「白薩摩の急須」

ちなみにこういった白い焼き物を生産する地域は京都の清水焼や佐賀県の伊万里焼(いまりやき)などが有名です。鹿児島はご存じのように桜島など活火山を保有する地域であるため、頻繁に火山灰が土地に地層をつくってしまいます。火山灰は鉄分が多く、色が黒かったり茶色かったりするため、他の地域と比べて余計にこの白薩摩が貴重だったようで、島津家のみが使える焼き物となったそうです。

黒薩摩(くろさつま)は、大衆用の日用雑器として焼かれていた陶器で、鉄分含有量が多い土を用いるため、見た目が黒くなります。特に、”黒ぢょか”と呼ばれる素朴な土瓶(どびん)は、薩摩焼酎(さつましょうちゅう)や 日本酒の酒器に使われます。

黒薩摩焼(くろさつまやき)の黒ぢょか

沈寿官窯へ|美しい煎茶道具を求めて

鹿児島市内から西へ西へとバスに揺られて美山 (みやま) というバス停に降り立ちます。 すぐそばにあるのが、「沈壽官窯 」(ちんじゅかんがま)です。国の伝統的工芸品指定を受けている「薩摩焼」を代表する窯元のひとつです。

ーーーー基本情報ーーーー

住所:〒899-2431 鹿児島県日置市東市来町美山1715

問合せ先:099-274-2358

開館時間:9時~17時

アクセス:JR伊集院駅からバスで10分、鹿児島市街地から約20分 (美山インター下車) 

 鹿児島県日置市東市来町美山(旧・苗代川)にある薩摩焼を代表する窯元です。その歴史は約400年ほどつづく薩摩焼の歴史と匹敵するほど長く、薩摩焼といれば「沈寿官窯」とよばれるほど窯元で、”竜馬がゆく”や”坂の上の雲”で有名な司馬遼太郎(しばりょうたろう)氏の短編”故郷忘れじがたく候”で一気に有名になったそうです。

薩摩焼のことについて描かれた司馬遼太郎「故郷忘れじがたく候」

鹿児島の地で伝統の技を継承しつつ,現代に確かな焼物作りを目指して,現当主の十五代沈壽官と工房の職人達が日々切磋琢磨しており、薩摩の歴史とともに歩み続ける窯元では,作品作りの工程を見学できます。

鹿児島県の工芸品・薩摩焼窯元の”門”とは

薩摩焼窯元(かまもと)沈壽官(ちんじゅかん)窯の入り口につくと、何やら重厚な木造の立派な門が見えてきます。

一言で門といっても、日本における”門”も役割は大きく、その家の”格”を表すものです。たかが門ですが、わざわざ瓦屋根にしたり、漆を塗ったり、木彫りにしたりとするのが日本文化です。

沈壽官窯の門構えは、重厚そうでありながらもシンプル、”格”を大事にする薩摩藩らしさをうかがい知れます。

そして気になったのが木札に「大韓民国総領事館」と書かれているところです。

どうも1989年に、沈壽官14代目の当主が、日韓の文化交流に尽くしたことを評価された受け取られたものらしいです。素晴らしいですね。

鹿児島県の窯元「沈壽官窯」の門

薩摩焼は、かつて豊臣秀吉(とよとみひでよし)の時代に、朝鮮陶工(ちょうせんとうこう)が薩摩藩に連れてこられてはじめたものです。以降ずっと日本のこの地(鹿児島県)で焼き物を作り続けてこたれてますが、自分たちの技術のアイデンティティーはどこにあり、それを忘れないという考え方は、とても素敵だと思います。

司馬遼太郎さんの「故郷、忘れじがたく候」も、沈壽官14代当主へのインタビューから描かれた作品で、タイトルに”忘れじがたく”と入れるのは、そういう想いを、司馬さんが、沈壽官当主から感じとったからでしょうか。

また門にはもう1つ気になるものがあります。

こちらの門の礎石部分に彫られている「石敢当」の文字です。

鹿児島県の窯元「沈壽官窯」の門にある”石敢当”

石敢当(いしがんどう)とは、中国から伝わったもので、道路の三叉路(さんしゃろ)の突き当たりや門・橋などに立てられた石柱で、石に敢えて当てて邪気を跳ね飛ばすといわれており、邪気を食い止めこれを追い払う威力を持つと信じられていたそうで魔除けとして、鹿児島県や沖縄県の家庭でみられるものです。

薩摩焼の登り窯

門をくぐり中に進むと、実際に薩摩焼の焼成時(しょうせいじ)に使用する登り窯を見学できました。

赤みがかった耐火煉瓦(たいかれんが)がドーム型に積まれ、こちらの窯小屋の上部にある梁(はり)の上には神棚(かみだな)が設置されています。

不勉強で申し訳ないのですが、こちらのようなドーム型の登り窯ははじめて見たタイプのものでして、あってるか分からないのですが、沈壽官窯の独自のものなのでしょうか、とりあえず許可をもらい写真撮影だけしました。

鹿児島県の陶磁器”薩摩焼”の登り窯

登り窯とは、焼成室(房)を斜面に複数連ねた窯の総称で、大量に陶磁器を生産できる窯のことです。炎の性質を利用し、一番下の焼成室で1000度以上の高温の火を焚いて、上の焼成室の陶磁器も焼成できるようになっています。

日本での登り窯の歴史は、またに豊臣秀吉がいた戦国時代に、朝鮮陶工を連れてきた際に、この登り窯の技術が日本に渡ってきたといわれています。

実際に触ってみると、ツルツルしてる部分とザラザラと土感があるところに分かれていました。薩摩焼は釉薬を使用するため、その溶けた釉薬が液面に付着し、そのままコーティングされていたのでした。

また匂いや質感、実際に焼けたばかりのものも見せてもらいましたが、実際に行かないと感じとれない現地の雰囲気を文章にできず、あえて「ぜひ行ってみてください」とか書いて締めくくりたいと思います。(長くなりますから直に聞いてください笑)

薩摩焼を詳しく知るならここ「沈壽官窯収蔵庫」

沈壽官窯の敷地内には、登り窯や工房以外に、ギャラリーショップや薩摩焼の資料館である沈壽官窯収蔵庫(ちんじゅかんがましゅうぞうこ)があります。

館内には、沈壽官初代から、現当主までの作品を展示されており、薩摩焼の特徴や技術、どういう考え方で制作されているのかがわかる内容となっております。

ちなみにわたしが興味をもった展示は、”京薩摩”(きょうさつま)でした。

ぜひ薩摩焼に興味を持たれた方に、おすすめしたい資料館でした。

また薩摩焼にもっと興味を持たれた方ように、鹿児島県内で薩摩焼をゆっくり鑑賞できるミュージアムや美術館をご紹介します。

鹿児島市立美術館

ーーーー基本情報ーーーー

住所:〒892-0853 鹿児島県鹿児島市城山町4−36

問合せ先:0992243400

営業時間 9:30~18:00(毎週月曜定休)

アクセス:・JR鹿児島中央駅よりカゴシマシティビューバス「西郷銅像前」下車、徒歩1分|鹿児島市電「朝日通電停」下車、徒歩5分

鹿児島市立美術館は、1954年に開館した九州で長い歴史を持つ美術館です。 薩摩藩主・島津氏の居城であった鶴丸城(つるまるじょう)二の丸跡に建ち、シックなベージュ色の外壁と緑色の屋根が、背後の城山の森と美しく調和しています

鹿児島県ゆかりの作家を中心として、19世紀末葉以降の西洋美術の作品を収集・保存、展示しています。所蔵品展では、日本の近代絵画の発展に貢献した黒田清輝(くろだせいき:1866年-1924年)や藤島武二(ふじしまたけじ:1867年- 1943年)、和田英作(わだえいさく:1874年-1959年)といった郷土作家の作品とあわせ、薩摩焼やガラス工芸の薩摩切子(さつまきりこ)の名品が数多く展示されています。

長島美術館

長島県立博物館は、1989年に市の公式創設100周年にあたり、鹿児島県鹿児島市に開館しました。桜島と鹿児島湾を見下ろす高台にある高さ110 mの美術館で、実業家の長島浩介が収集した絵画、彫刻約300点、薩摩焼及び地方の窯別に収集された陶磁器、アール・ヌーヴォー・ガラス数千点の品々が収蔵されています。

住所:〒890-0045 鹿児島県鹿児島市武3丁目42−18

問合せ先:0992505400

営業時間 9:00~17:00(毎週水曜定休)

アクセス:JR鹿児島中央駅下車、徒歩15分、JR鹿児島中央駅下車、車で5分

鹿児島県立博物館

こちらには薩摩焼が展示されていないのですが、焼き物や陶磁器はその土地の地質や気候、風習が影響されてくるものです。とくに鹿児島県は、火山地帯だったり、ユーラシア大陸と近く外国文化との交流があったため特殊な技術がはいってきたりと、この九州最南端の土地柄から調べることが、意外にも薩摩焼の新しい側面を発見するきっかけとなるかもしれません。こちらの博物館では、鹿児島県の民俗学、地質学、植物学を総合的に学べる施設です。ぜひご活用ください。

ーーーー基本情報ーーーー

住所:〒892-0853 鹿児島県鹿児島市城山町1−1

問合せ先:099-223-6050

営業時間 9:00~17:00

アクセス:鹿児島市電「天文館通電停」下車、徒歩10分

以上になります。

陶磁器の世界は奥が深いですね。

ほかの焼き物や工芸品の産地に行って勉強したいと感じました。

こういった現地で学んだことや知れたこと、雰囲気や慣習などを、煎茶道のお茶会やお稽古でも、煎茶道具をとおして伝えていきたいと思いました。

次回はどの産地になるのでしょうか。お楽しみに。