奈良県の”赤膚焼”(あかはだやき)|美しき煎茶道具をもとめて
こんにちは。
今回は煎茶道のお手前で使用する奈良県の焼き物である”赤膚焼”(あかはだやき)をご紹介させていただきます。
目次
美しき煎茶道具をもとめてとは
日本茶の趣味として、煎茶道という伝統芸道があります。抹茶の茶道は有名ですが、煎茶道とは急須からお茶をいれる茶道の流派です。茶道と同じようにたくさんの煎茶道具をもちいて、お客様に美味しいお茶をいれるため、”見て”楽しんでいただくためにも道具の美しさは重要です。
このシリーズでは、お客様にお茶をより美味しく、より楽しく飲んでいただくために、各地の伝統工芸の産地に勉強に行ったこともふくめて、まとめた記事です。
赤膚焼とは
赤膚焼(あかはだやき)とは奈良県を代表する工芸品で、奈良県奈良市、大和郡山市に窯場が点在する陶器です。
鉄分が多くふくまれる赤土色の赤膚山(あかはだやま)の土を焼き上げ、乳白色の釉薬をたっぷりかけるのが特徴です。

赤膚焼の歴史とは
赤膚焼の創始は不祥ですが、どうも古代に埴輪や土器をつくっていた時代までさかのぼることができるようです。
奈良と言えば、万葉集によくでる「青丹よし」(あおによし)よいう枕詞(まくらことば)が有名ですが、土器にかける釉薬の青丹(あおに:顔料となる岩緑青(いわろくしょう)を表わす古名)がよく採掘できたのが、この赤膚山周辺だったそうです。
その後、豊臣秀吉の弟である豊臣秀長(ひでなが)が奈良県の大和郡山城の城主として奈良にはいり、茶の湯文化が一気に発展しました。秀長が常滑(現在の愛知県)から陶工・与九郎を呼んで開かせたのち、赤膚焼の技術は一気にあがり、利休七哲の一人である小堀遠州の七窯に数えられるまでになりました。
1800年頃大和郡山藩主柳沢尭山(やなぎさわやすみつ)が瀬戸(せとや京都から陶工を招き、奈良市・五条山(赤膚山)に開窯して以来本格化したと考えられています。 赤膚焼中興の祖と呼ばれるのが陶工・奥田木白(おくだもくはく)です。奥田家は郡山藩の御用小間物商「柏屋」として問屋をおこなっておりましたが、木白は趣味で茶の湯を嗜んでおり、楽焼も自分で制作していたそうです。
その後に家業を引退し、陶工となった木白は、現在の赤膚焼の特徴の1つである、器の表面に”奈良絵”を描くという技法を生み出しました。

赤膚焼の特徴である”奈良絵”とは
奈良絵が描かれた陶磁器は、古くから赤膚独自の意匠として多くの茶人等に愛用されてきました。室町時代の末期頃から江戸時代にかけて作られた、横本形式の絵草紙(えぞうし:江戸時代に発刊された絵入りの娯楽本)「奈良絵本」(ならえほん)に由来する絵を”奈良絵といいます。
シンプルでどこかコミカルでかわいい奈良絵のモチーフとされているのは、過去現在因果経(釈迦の前世の生涯から現世に生まれて仏陀となり、数多の弟子達に悟りの道を説くに至る一種の釈迦伝)です。過去現在因果経の教えを絵で説明したものを赤膚の器等に合うよう図案化されたものが現在の奈良絵で、東大寺や法隆寺など、古くから仏教が盛んな奈良県らしい伝統的なデザインです。

赤膚焼の奈良絵の種類について
奈良絵には、漫画のようなコミカルな絵柄が描かれており、先述したように、過去現在因果経という経典から着想をえていたり、奈良に昔から伝わる物語が、器のまわりにデザインされていたりします。
ちなみに下記にわたしが購入した赤膚焼の徳利動画を添付しましので、ぜひかわいらしい奈良絵の衣装をご覧ください。
そちらに書いてある絵柄について簡単に説明させていただきます。
動物…神の使いである鹿が描かれています。奈良県にある世界遺産「春日大社」の御祭神である武甕槌命(タケミカヅチノミコト)は、鹿島神社(かしまじんじゃ:茨城県)から神鹿に乗ってってやってきたと伝わるため、奈良では鹿は神の使いとして古くから手厚く保護されてきました。
お堂…お釈迦様のいらっしゃったお堂や籠説、もしくは”過去現在因果経”は東大寺(とうだいじ)の正倉院御物(しょうそういんぎょぶつ)でもあるため、奈良の大仏殿を(年に幾度か窓が開き外から大仏が見れることがある)書いた説があります。
人物…お釈迦様のお話や説法を受けに来た人。悟りにはいった仏様のまわりには、あらゆる生物が集まり寄りそうといわれています。
鳥…天界と下界を往来する瑞鳥(ずいちょう)を描いているといわれています。下記の徳利でいうと、飲み口を天界とし、その天界から瑞鳥がお花(=吉祥の象徴)を下界に持ってきているのを表しているそうです。
自宅用に購入した奈良県の赤膚焼(あかはだやき)の徳利(とっくり)
あまりにも絵柄やフォルムなどデザインが可愛かったので、晩酌用の徳利を購入しました。
小さい徳利にも、丁寧に”奈良絵”がデザインされています。
こちらの動画で赤膚焼の徳利をご紹介しております。
地方文化を盛り上げたい。
私ごとですが、地方文化や伝統工芸をもっと盛り上げたいと思っています。
いま日本の社会問題としてあげられる伝統産業の担い手不足や、地方からの若者流出、人口減少、限界集落問題などがあります。
たくさんの要素がかさなって、こういった社会問題が発生していますが、わたしは地方文化や伝統産業の魅力をもっと広報PRすることで、サポートしていきたいと考えています。
地域の人がみんなで守ってきた文化や風習、慣習。そこには優しい魅力があり、その魅力を発信して理解してもらうことが地域への愛着につながり、問題解決の小さな糸口になると考えおります。
みんな地方文化を盛り上げましょう!
赤膚焼大塩昭山窯
大塩昭山窯(おおしおしょうざんがま)は、赤膚山で茶道具を主に製作する窯元です。
赤膚焼の窯元は奈良市に4軒、大和郡山市に2軒あるうちのひとつで、現在で4代目とのこと。
絵付け、手びねり、ロクロ体験など、ホームページ上から気軽にお申込みいただけます。
ーーーー基本情報ーーーー
住所:〒631-0052 奈良県奈良市中町4953
問合せ先:074‐245‐0408
営業時間:9時~17時30分
アクセス:近畿日本鉄道学園前駅からバス約10分、東坂下車、徒歩約3分
赤膚焼 大塩正人窯
大塩正人窯(おおしおまさんどがま)も、おなじく赤膚山で茶道具を主に製作する窯元です。
事前に問い合わせをすると、時間が合えば、現当主の大塩正巳さんやお弟子さんが、赤膚焼のこだわりについてレクチャーいただけます。
ーーーー基本情報ーーーー
住所:〒630-8035 奈良県奈良市赤膚町1051−2
営業時間:要問合せ
問合せ先:TEL 0742-45-4100 FAX 0742-46-9955
アクセス:近鉄学園前駅南口より奈良交通バス「赤膚山」行き乗車約10分、終点「赤膚山」下車徒歩2分。近鉄西ノ京駅よりタクシー10分。
赤膚山元窯 古瀬尭三(ふるせぎょうぞう)

赤膚山元窯 古瀬尭三窯の祖である治兵衛(じへい)が、18世紀の末頃に、京都より赤膚山五条山に入山したのが始まりです
茶人としても高名な大和郡山藩城主 柳澤保光侯こと柳澤堯山侯の大和郡山藩御用窯として赤膚焼を再興された、現存する窯元でも最古級です。
店内では、作品の展示販売のほか、絵付け体験や手ひねり体験なども行われており、赤膚焼の魅力である土に触れることができます。
ーーーー基本情報ーーーー
住所:〒630-8035 奈良県奈良市赤膚町1049
問合せ先:0742-45-4517 FAX 0742-45-6726 Mail:akahada@kcn.ne
営業時間:9時~17時
アクセス:近鉄学園前(帝塚山学園)南口駅より「赤膚山」行き23、24系統約10分(10分間隔で運行)、「赤膚山」終点下車、バスが来た方向に少し戻り1つ目の信号を右折徒歩3分。
赤膚焼窯元 尾西楽斎(おにしらくさい)
JR郡山駅から徒歩すぐ、大和郡山市にある赤膚焼の窯元である、”赤膚焼窯元 尾西楽斎”に到着します。
赤膚焼は先述したとおり、仏教と深く関係した焼き物なので、こちらの窯元では、作品の一部は、奈良県の世界遺産である春日大社(かすがたいしゃ)や薬師寺(やくしじ)、東大寺(とうだいじ)などにおさめられているそうです。
春日御土器師(かすがおんどきし)の号も与えられているそうで、伝統的で奥深い赤膚焼を購入するさいに検討したい窯元さんです。
こちらの窯元でも、赤膚焼の粘土をつかったロクロの手びねり体験(3000円~)や絵付け体験(2000円~)が行われています。
ーーーー基本情報ーーーー
住所:〒639-1132 奈良県大和郡山市高田町117
問い合わせ先:074‐352‐3323
営業時間 8:00~18:00
アクセス:JR郡山駅から徒歩3分、近鉄郡山駅より徒歩12分
また窯元以外にも、奈良県で赤膚焼を鑑賞、勉強できるスポットをご紹介します。
奈良国立博物館
奈良国立博物館は、日本4つ国立博物館のうちの1つです。
仏教彫刻、仏教絵画など仏教美術の名品が多数展示されており、なら仏像館では100体近くの仏像を常時展示しています。
こちらの博物館の名物企画は、ご存じの方も多いと思いますが「正倉院展」(しょうそういんてん)です。
京都より長く、1300年つづく奈良の町の至宝がご覧いただけます。
また定期的におこなわれる伝統工芸企画展では、奈良国立博物館所蔵の赤膚焼・奈良一刀彫(ならいっとうぼり)・奈良漆器(ならしっき)が多数展示されます。
ーーーー基本情報ーーーー
住所:〒630-8213 奈良市登大路町50番地
開館時間:午前9時30分から午後5時(※毎週金・土曜日は午後8時まで)
休館日:毎週月曜日、12月28日~1月1日
問合せ先:TEL050-5542-8600(ハローダイヤル)FAX:0742-26-7218
アクセス:(1)近鉄奈良駅より徒歩約15分(2)市内循環バス外回り(2番)「氷室神社・国立博物館」下車すぐ
奈良県立美術館
奈良県立美術館は、奈良県奈良市にある美術館。 風俗史研究家・日本画家の吉川観方から寄贈された近世日本画、浮世絵、美術工芸品のコレクションを基礎に、1973年開館されました。
日本美術を中心に鎌倉時代から現代に至るまでの優品、奈良にゆかりの深い美術工芸品が展示されており、定期的に展覧会として赤膚焼の特集が組まれます。
ーーーー基本情報ーーーー
住所 〒630-8213 奈良県奈良市登大路町10−6
問合せ先:0742233968
開館時間:9時~17時
アクセス:近鉄・奈良駅/1番出口から徒歩5分. JR・奈良駅/東口バス乗り場から奈良交通バス「県庁前」下車徒歩すぐ
なら工藝館
日本文化の源流である奈良県には、さまざまな工芸品があります。
奈良の伝統工芸品である奈良漆器(ならしっき)、一刀彫(奈良人形)、赤膚焼、奈良筆、奈良墨、奈良晒(ならさらし)、古楽面(こがくめん)、乾漆(かんしつ)、秋篠手織、鹿角細工などの展示販売をおこなっています。工芸品が発達している奈良県のアイテムが一同に揃う、翼仙おススメのスポットです。
工芸教室や工芸の実演もおこなわれておいり、伝統文化や工芸に興味のある方はハズせないショップです。
ーーーー基本情報ーーーー
住所:〒630-8346奈良県奈良市阿字万字町1番地の1
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
問合せ先:TEL : 0742-27-0033 FAX : 0742-27-9922
アクセス:近鉄奈良駅より徒歩10分、JR奈良駅より徒歩18分