1300年を紡ぐストーリー”鳴子こけし”宮城県大崎市|茶道や煎茶道の床飾り

宮城県仙台空港に展示されている東北各地のこけし

最近は”コケ女”というのが流行っているそうです。

文字通り温泉街の土産物として有名な”こけし”が好きな女性たちのことです。

数百年前から続く”こけし”と、インスタやモダンファッションに慣れた現代の女性がマッチングしているギャップに、名称がつけた結果”こけ女”となったわけですが、じつは”こけしブーム”というのは、定期的にあるようです。

古くは、戦前の”こけし専門書”の発刊をトピックスとしたものや、戦後の団体旅行ブームで温泉旅館需要が高まった際の土産物ブーム。また柳宗悦氏や河井寛次郎氏の民芸運動の盛り上がりによる”こけし”コレクターの出現など、他にも数多あるそうです。

そんな”こけし”ですがいつからあるのか。

じつはなんと1,300年前なんです!

今回は、そんなどの年齢層にも、どの年代にも”うける”工芸品である”こけし”を、こけし発祥の地として知られる宮城県大崎市出身のわたしが、煎茶道や茶道というフィルターを通して見た”こけし”という視点で、解説していきます。

茶道や煎茶道と”こけし”

茶道・煎茶道と”こけし”、一見あまり関係ないように見えます。

しかし茶会や床の間のある家に行くと、床の間に、地域の伝統工芸品が置かれているのを見かけます。

茶道や煎茶道の床飾りとは

茶道や煎茶道の茶会でよく見かける床の間の”床飾り”

床飾り(とこかざり)とは、ご家庭の茶の間や茶道・煎茶道の茶室に必ず設けられている”床の間”(とこのま)装飾のことです。床の間の歴史は古く、室町時代の書院造にみられた建築様式だといわれています。

室町時代には、掛け軸(かけじく)に香合や香炉(こうろ)、そして花を生けた花瓶の三具足(みつぐそく)を配置することが決めごとであったと言われておりますが、長い歴史を経て、いまでは各家庭の宝物や自慢の一品をお客様にご覧いただくギャラリーとなっています。

お客様を、自分の一番美しいと思うので迎える、素敵な和文化ですね。

煎茶道(せんちゃどう)とは

煎茶道
煎茶道

煎茶道とは、茶道の流派の1つでして、急須で茶葉からお茶を淹れるのが特徴です。

煎茶の生産方法が伝わった江戸時代に流行し、いまでは全国に300以上の流派があると言われております。

煎茶道を好んでおこなっていた著名人として、京都の富岡鉄斎(とみおかてっさい)や、旧千円札で有名な夏目漱石(なつめそうせき)があげられます。

伝統工芸品の「こけし」とは

こけし
伝統工芸品”こけし”とは

こけし(小芥子)は、江戸時代後期(文化・文政期)頃から、東北地方の温泉において、湯治客(とうじきゃく:湯治とは、泉宿に長期滞在をして病気治療や療養を行うこと)に土産物として売られるようになった木轆轤(きろくろ)で挽いた木製の人形玩具(にんぎょうがんぐ)のことです。

一般的には、木轆轤で挽いて摩擦で表面を滑らかにした後の球形の頭部と円柱の胴に絵付けをした、シンプルな形態をしています。

地方文化を盛り上げたい。

私ごとですが、地方文化や伝統工芸をもっと盛り上げたいと思っています。

いま日本の社会問題としてあげられる伝統産業の担い手不足や、地方からの若者流出、人口減少、限界集落問題などがあります。

たくさんの要素がかさなって、こういった社会問題が発生していますが、わたしは地方文化や伝統産業の魅力をもっと広報PRすることで、サポートしていきたいと考えています。

地域の人がみんなで守ってきた文化や風習、慣習。そこには優しい魅力があり、その魅力を発信して理解してもらうことが地域への愛着につながり、問題解決の小さな糸口になると考えおります。

みんな地方文化を盛り上げましょう!

こけしの名前の由来・語源

こけし
”こけし”の名前の由来・語源とは

こけしの名前の由来は諸説あります。

まずは”木削子”説です。その名の通りですが、木(こ)を削って(けずって)つくった小さい人形というものです。日本では古来より、なにかしらの願いや想いを込めて人形をつくる文化があります。ひな人形や土人形が有名です。こけしもそれにならってつくられたのでは、と考えられています。

次に”木の芥子人形(けしにんぎょう)”説です。これもその名の通りですが、木材でつくった芥子人形(けしにんぎょう:非常に小さい人形のこと)という考え方です。宮城県仙台市には、堤土人形(つつみつちにんぎょう)という郷土玩具があり、それにならって、木材で芥子人形をつくったのでは、という説です。

さらに”芥子坊主に似ている説”もあります。江戸時代の男の子や女の子たちの髪型が絵付けされており、そういった子たちを芥子坊主(けしぼうず)と呼んでおり、似ているからという考え方もあるそうです。

1300年を紡ぐストーリー”こけし”

滋賀県東近江市にある、奈良時代か現在まで続く木地師文化

こけしの歴史は古く、なんと奈良時代までさかのぼります。当時の社会混乱をおさめるため、称徳天皇(しょうとくてんのう)によって発願され制作された百万塔(ひゃくまんとう)の製作技術がベースにあるといわれています。

百万塔とは、轆轤挽(ろくろび)きし白色顔料が塗布された、高さ30センチぐらいの木製の小塔です。中は空洞になっており、百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)と呼ばれる仏教の経典がはっていました。

なんとこの小塔が、文字通り、奈良時代に百万個も製作されたというのです。

現在でも奈良国立博物館所蔵の百万塔が、常時展示されていて見学できるのですが、こんなにも歴史が古いと聞くとびっくりですね。

製作したのは、木地師(きじし)と呼ばれる東近江発祥の木工集団です。

この木地師が良質な木材をもとめて全国に散らばり、東北の温泉街に定住するようになった木地師たちが制作するようになったのがこけしだといわれています。

鳴子こけしとは

宮城県大崎市にある鳴子温泉のこけし広場
宮城県大崎市にある鳴子温泉のこけし広場

先述したように、こけし文化は、東北の温泉街を中心に育まれてきた文化です。

東北地方は”秘湯”(ひとう)というワードがうまれるほど山奥や各地に温泉が湧き出ています。

東北地方では昔、第1次産業がメインのエリアであるため、作物が収穫できない農業の閑散期である冬に、日ごろ休み無しで働く身体を滋養するため、一家団欒で数週間にわたり温泉宿に宿泊する慣習である湯治文化(とうじぶんか)がうまれました。

宮城県大崎市にある鳴子温泉は、その湯治文化を象徴する代表的な温泉街です。

温泉の泉質(せんしつ:アルカリ性や酸性など温泉の分類のこと)が世界に11種類ある内の、なんと9種類の泉質を楽しめる、いわば温泉の横綱、長居するのにもってこいの場所なんです。

また大崎市は、世界農業遺産にも登録されるほど、豊かな穀倉地帯”大崎平野”を中心に、東北の米どころとして知られています。疲れた身体を癒すため、生まれるべくして生まれた文化なんですね。

こけしが出来るまで

そんな”こけし”が出来るまでの工程を、簡単にご紹介します。 

【こけし制作工程】

①原木の伐採⇒②木材の乾燥⇒③乾燥した木材を切断⇒④ろくろ挽き⇒⑤胴体と頭で首入れ⇒⑥絵付けをして完成

こけしの原木は、きめ細かな白い木肌を持つミズキや、歳月とともに美しい光沢を増すイタヤカエデなどが選ばれます。

木々が乾燥する秋口に山に入って木材を調達し、木を伐採します。

切り倒された木は半月から1ヶ月くらい、枝・葉をつけたまま放置されます。
これは、木の幹から水分を抜くためです。その木を約7尺(210cm)の長さに切り皮をむき約1年間自然乾燥され、こけし作り使われます。

その後、想定のこけしの大きさや木目を考えて切断します。

切ったあとの木材は、こけしの形にするため木轆轤にて頭挽きと胴挽きをおこないます。

木轆轤にて挽いた後の頭と胴は、ろくろで胴を回転させながら、摩擦を利用して、頭を合わせます。

形ができたコケシは、伝統的な絵柄や色彩によってデザインされて、こけしとして湯治や観光で訪れた人々を楽しませるお土産として店頭に並びます。

宮城県大崎市の鳴子こけしを見にいってきました

宮城県大崎市の名勝「鳴子峡」(なるこきょう)

JR東北新幹線「古川駅」から車で40分、鳴子温泉郷に到着します。

季節は秋がおすすめです。東北地方は、奥羽山脈に沿って温泉街が点在しているため、山の紅葉がとてもきれいです。

電車もいいですが、鳴子温泉郷は、川渡温泉(かわたびおんせん)や鬼首温泉(おにこうべおんせん)、東鳴子温泉など多岐にわたる温泉地を抱えているので、車移動を前提に移動したほうが良いです。

鳴子温泉湯めぐり駐車場(無料)に車をとめたのち、徒歩で鳴子温泉街を見て回ります。

まさに”こけし”のデパート、あちこちが”こけし”になっています。

宮城県大崎市にある鳴子こけしポスト

建物より高い巨大こけし

クレイジーな街づくりですね。

こけし一本集中型です。

また鳴子のお店に入ると店内はこけしだらけ。

歩いでいるだけで面白いです。

こけしは今、こんなに進化していた!?川渡温泉「準喫茶カガモク」さん

ーーーー基本情報ーーーー

住所: 〒989-6100 宮城県大崎市鳴子温泉川渡49

問合せ先:070-5540-7150

営業時間:10時~16時(毎週金土日のみ開店、不定休)

アクセス:JR陸羽東線「川渡温泉駅」から徒歩15分

鳴子温泉郷の一角、川渡温泉(かわたびおんせん)エリアにある「準喫茶カガモク」さんにやってきました。

こちらは喫茶店といいながらも、さすが鳴子温泉郷の一角、店内はこけしだらけです。

そしてそのこけしが、一言で表すと「こけしの進化」?、「こけしのダイバーシティ化」?

宮城大崎市にある「準喫茶カガモク」さんのこけしテーブル

店内でコーヒーを飲もうとお座敷にあがって何気なくテーブルを見たら、足がこけしでした。

思わず二度見するほど驚きましたが、天板はしっかりした木目の木材で、足が可愛らしいこけしというギャップに思わず見惚れました。

こけしテーブルに目を奪われていると、運ばれてきたコーヒーを飲みながら、さらに驚きました。

なんと「こけしコースター」に「こけしミルクピッチャー」!

宮城県大崎市川渡温泉エリアに準喫茶カガモクさん

いま自分の生活を振り返ると、木材の生活雑貨がたくさんあります。

こけしというのは、木工の基礎ともなっている木地師の技術が使われています。

木材だったらこけしになる!こけしの未来は明るいです!!

こけしを買うには、、、ここ!

こけしは、とてもリーズナブルな値段でお土産として店頭に並んでいます。

こんな感じで、鳴子温泉駅から目の前の「湯の街通り」には、たくさんのお土産や雑貨屋さんがならんでいます。

そのなかでもおすすめのお店を2店ほどご紹介します。

大崎市鳴子温泉「桜井こけし店」

鳴子こけしを代表する桜井昭寛氏のこけし工房です。

桜井家は鳴子温泉にて江戸末期から代々続く、木地師の家系であり、代々伝統の技術を受け継ぎながらも、昔ながらのイメージを覆すモダンなデザインの”こけし”を制作されています。

ーーーー基本情報ーーーー

住所: 〒989-6823 宮城県大崎市鳴子温泉湯元26−6

問い合わせ先:0229-87-3575

営業時間:8時~19時

アクセス:JR陸羽東線「鳴子温泉駅」から徒歩5分

岩下こけし資料館

ーーーー基本情報ーーーー

住所:宮城県大崎市鳴子温泉古戸前80

問い合わせ先: TEL0229-83-3725  FAX0229-83-2666

営業時間:7時30~18時

アクセス:JR陸羽東線「鳴子温泉駅」から徒歩18分、最寄りのバス停「鳴子総合支所」から徒歩21分

岩下こけし資料館では、こけし関するあらゆる資料が展示されています。日本最古のロクロで制作の古木器や東北各地のこけし、現代作家によるこけしや職人による木轆轤の実演が行われています。

なかにはこけし以外にも、こけし制作技術を応用した木のスプーンやお盆、皿、お箸なども販売していますので、ぜひお立ち寄りください。

鳴子こけしを見るなら「日本こけし館」


日本こけし館は宮城県大崎市鳴子温泉に所在するこけしに関する施設で、童話作家の深沢要が私蔵のこけし600点余りを町に寄贈したことにより誕生しました。館内には故高松宮親王や、陶芸家の溝口三郎、俳優の菅原文太寄贈のこけし展示を鑑賞できるほか、日替わりでこけし工人さんが実演をおこなったり、こけしの絵付けを体験することができる観光スポットでもあります。

ーーーー基本情報ーーーー

住所:〒989-6827 宮城県大崎市鳴子温泉尿前74−2

問い合わせ先:0229833600

営業時間:9時~17時

アクセス:JR陸羽東線「鳴子温泉駅」から徒歩で25分

他の有名なこけしを見るなら「みやぎ蔵王こけし館」(蔵王町伝統産業会館)

「みやぎ蔵王こけし館」があるのは、宮城県蔵王町にある遠刈田温泉(とおがったおんせん)のエリアです。

古くから湯治客(とうじきゃく)が行き交うこの温泉地はこけし発祥の地ともいわれており、このこけし館がつくられました。

全国の伝統こけし,木地玩具 を展示し,県別,系統別,工人別に わかりやすく展示されており、また、こけし工人による木轆轤の実演や遠刈田こけし販売コーナーもあります。

ーーーー基本情報ーーーー

住所: 〒989-0916 宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉新地西裏山36−135

問い合わせ先: 0224-34-2385

営業時間:9時~17時

アクセス:東北新幹線白石蔵王駅からバスで50分、東北自動車道白石ICから車で30分

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