石川県の”山中塗”について

みなさん、石川県の工芸品「山中塗」ってご存じでしょうか。

「輪島塗(わじまぬり)なら聞いたことある」「山奥の山村の伝統工芸?」といった声が多いと思います。

友人に聞いてみると、こんな感想をいただくのですが、じつは山中塗とは、漆器のベースとなる木地生産日本一、国内有数の漆器なんです。

今回はそんな山中塗を紹介させていただきます。

地方文化を盛り上げたい。

私ごとですが、地方文化や伝統工芸をもっと盛り上げたいと思っています。

いま日本の社会問題としてあげられる伝統産業の担い手不足や、地方からの若者流出、人口減少、限界集落問題などがあります。

たくさんの要素がかさなって、こういった社会問題が発生していますが、わたしは地方文化や伝統産業の魅力をもっと広報PRすることで、サポートしていきたいと考えています。

地域の人がみんなで守ってきた文化や風習、慣習。そこには優しい魅力があり、その魅力を発信して理解してもらうことが地域への愛着につながり、問題解決の小さな糸口になると考えおります。

みんな地方文化を盛り上げましょう!

山中塗とは

石川県の西部地域、福井県との県境にある加賀市の山中温泉エリア(旧:江沼郡山中町)、山中塗(やまなかぬり)とはそこでつくられる伝統的な漆器(しっき)のことです。

山中塗は日本最大の漆器生産地域で、地名にあるとおり北陸の深い山間に開拓された集落であるため、周辺の山々にある豊富な木材を調達して、さまざま特色をもつ漆器が制作されています。

山中塗の歴史

山中塗の歴史は古く、安土桃山時代(1573年-1592年)までさかのぼります。有名な福井県の越前塗、そこで活動していた木地師が北上して山中温泉エリアに住み着いたことからはじまります。(※諸説あり)

山中塗の歴史は、木地師(きじし)の歴史でもあります。

木地師とは、山に入って木を切り、木轆轤(きろくろ)を使って、木からお椀やお盆といった「木地」を作る職人のことです。彼らが山中温泉に移住し、湯治客(とうじきゃく)や周辺の村々を相手に漆器を作り始めたことが、山中塗のはじまりだと言われています。

その後に、漆器に装飾をする”蒔絵”(まきえ)や”沈金”(ちんきん)技法が導入され、茶道や煎茶道のお道具としても用いられるようになりました。

北陸地方は、福井県の越前塗(えちぜんぬり)や石川県の山中塗、輪島塗(わじまぬり)、富山県の高岡漆器(たかおかしっき)など、漆や木地師の歴史が深い地域です。

それぞれが伝承や言い伝え、資料があり、歴史は諸説あるそうですね。

山中塗の特徴

山中漆器の特徴は、自然の木目、加飾挽き(かしょくびき)、優雅な蒔絵(まきえ)の美しさだと、私は現地に行って思いました。

”自然の木目”とあえて強調するのは、山中漆器の特徴である「縦木」(たてき)という木取り方法に理由があります。

木工が盛んな地域では、横木という、要は木材をカットする段階で、横から刃をいれていきます。

しかし山中では、縦木を用います。縦木は狂い(歪み・ねじれ)にくいのが最大の特徴ですが、木目に沿って切らないため途中で割れたり、失敗する確率が格段に多くなってしまうそうです。

そんなリスクを負ってしまう分、木目は美しく、拭き漆で仕上げるとその木目が際立って綺麗に見えるため、”木地は山中”と他の挽物産地(ひきものさんち)の職人から言われているそうです。

加飾挽きとは、木轆轤をもちいて、白木の表面に刻みつける円状や渦状の装飾的なパターンまたはそのデザインのことを言います。木地師のなかでもめずらしく、その加飾挽きのための”鉋”(かんな)を木工職人が自らつくられそうです。山中塗を見る際はぜひこの”挽き”の技術もご覧いただきたいですね。

蒔絵は、漆器の表面に漆で文様や絵を描き、その上から金属粉を”蒔く”ことによって、光沢あるデザインにする技法のことです。江戸時代には茶道家から注文があったようで、いまでも茶道の”棗”(なつめ:茶入れのこと)の生産高は全国トップクラスだそうです。

山中塗の里へいってみた

石川県と福井県の県境、石川県を代表する山中温泉の湯治客への挽物業から”山中塗”はうまれました。

伝統工芸は、実際に現地にいってみないと良さが分かりません。

「なんでこの木材つかっているんだろう」「なんでこの色にしたんだろう」

謎解きのように見て回ると面白いですよ。

山中温泉はこんなところ!

山中温泉は、石川県加賀市にある日本三大名湯といわれるほどの温泉郷で、開湯1300年の歴史と豊かな自然、文人墨客が愛した情緒あふれる温泉地です。

「奥の細道」で有名な松尾芭蕉も絶賛しており、山中温泉のことを、兵庫県の有馬温泉・群馬県の草津温泉と並ぶ「扶桑の三名湯」(ふそうのさんだいめいとう=扶桑とは日本のこと)と讃え、「山中や 菊は手折らじ 湯の匂ひ」(※)の句を読みました。

※謡曲(ようきょく:能の詩のこと)『菊慈童』(きくじどう)にある、周の国の慈童が菊の露を飲んで不老長寿を得たとする話にちなみ、薬効のある山中温泉のお湯ならば、菊の露など飲まなくても700年の不老長寿が得られるに違いないと例えた一句。

石川県加賀市の山中温泉「菊の湯」

石川県の工芸品「山中塗」買うならここがおススメ。

山中塗は、都会だと百貨店や骨董品店で展示販売されていて、ちょっとハイクラスな買い物をするイメージですが、ご安心ください。現地価格にて購入できるおススメのスポットをご紹介します。

山中漆器 伝統産業会館

山中温泉から車で約10分、山中漆器の組合が運営する伝統産業会館に到着します。

こちらでは、山中漆器の歴史を語る名品から現代の名工まで伝統工芸品を広く展示するほか、日用食器からアクセサリー、茶道具まで、山中漆器の全てを産地価格で販売されています。

もうとにかく漆器や木工だらけで、伝統工芸好きにはたまらない空間です。

また、隣接する山中漆器産業技術センターでは木地挽物の工房見学

ーーーー基本情報ーーーー

住所:〒922-0111 石川県 加賀市 山中温泉塚谷町268-2

電話番号:0761-78-5205

営業時間:9時00分 ~ 17時30分(無休・年末年始 12月30日~1月3日)

アクセス:JR加賀温泉駅から加賀周遊バス キャン・バス山まわり → 山中1 山中うるし座 山中漆器伝統産業会館バス停からすぐ

加賀 伝統工芸村 ゆのくにの森

伝統工芸村「ゆのくにの森」は、石川県小松市粟津温泉にある伝統工芸のテーマパークです。緑豊かな丘陵地に築100年以上の江戸・明治時代の茅葺の古民家を移築してできた伝統工芸村。北陸・石川県・金沢が全国に誇る伝統工芸の数々を11の館で50種類以上本格的な伝統工芸体験をお楽しみいただけます。

ーーーー基本情報ーーーー

住所:〒923-0393 石川県小松市粟津温泉ナ-3-3

問合せ先:TEL 0761-65-3456 FAX 0761-65-3344

開村時間/9:00~16:30 臨時休業あり

アクセス:JR加賀温泉駅から車で20分、北陸自動車道加賀ICから約25分

漆器を使い方・取扱い方

最後にこれだけは、自戒の意味もこめて、記載させていただきます。

「漆器の取り扱い方」です。

”漆は生きている”とよく言われてます。生きた木々から採取した樹脂ですので、いわゆる有機化合物です。

そのためちょっと漆によくない使い方をすると、漆が剥がれたり、変色したりしてしまうので、ここれでは上手な漆器の使い方をご説明します。

・水に浸け過ぎない

長時間水に浸しておくことは、なるべく避けて下さい。漆は水を弾く性質がありますが、ずっと水に浸けておくと、漆がはがれるなどの劣化スピードが早くなります。なので食器として使用したあとは、できるだけ早く洗い、布で水気をぬぐい、乾いた柔らかい布でさらにふきあげると、光沢のあるの漆器のままでお使いいただけます。

・太陽光に晒し続けない

漆は紫外線に弱く、変色や劣化スピードが早くなるため、使用後はなるべく早く、棚にしまうことをおすすめします。

・漆の匂いが気になるときは。

新しく漆器を購入して、箱から出すと、漆の匂いが気になる!ってお声をよく聞きます。そういった場合は、風通しのよい日陰の場所に数日間置いておくか、2、3日ぐらい50、60°ぐらいの温水(高温はだめです)で湯通しをおすすめします。さらに気になる方は、”お酢”で匂いをとるこをおすすめします。薄めたお酢を布に浸けて、軽く拭くと匂いがとれます。

・漆器に指紋や跡がついたときは

油のしみ出ているものや、指紋がついたときは、柔らかい布や紙で、優しく拭きとることをおすすめします。漆はベースとなっている木地の碗の上から塗り上げたものになります。強くこすると漆が剥がれていますこともあるので、ゆっくり丁寧にとってあげましょう。

・これはやめた方が良いこと

タワシをつかうこと、磨き粉で研磨すること、食器洗い機にいれること、は避けることを強くお勧めします。今となっては便利なこれらの道具ですが、漆にとっては少し刺激が強すぎます。わが子のように扱うことによって愛着も湧いてきますし、味も出てきます。ぜひこれらのことに注意して、漆器ライフをお楽しみくださいね。

九谷焼が生まれた石川県の山代温泉もおすすめ

山中温泉から車で約20分、九谷焼で有名な山代温泉(やましろおんせん)があります。

工芸品つながりで、磁器(じき)で有名な九谷焼(くたにやき)が再興された、こちらの山代温泉をおすすめさせていただきます。

まず街並みが大正レトロで、浴衣や着物をきて歩きたい場所です。

山代温泉の雰囲気はこちらでの動画をご覧ください。

石川県の山代温泉のレトロな雰囲気

さらに近くには、九谷焼再興の地である九谷焼窯跡展示館があります。

こちらでは工芸品である九谷焼の材料となる粘土や成形道具、焼成の窯が展示されており、九谷焼現代作家さんの作品も、定価で購入することできます。

こちらも面白いので、山中塗の旅にいかれた際は、山代温泉にもぜひお立ち寄りくださいね。

石川県加賀市にある九谷焼窯跡展示館